ORTEP図とは
X線結晶構造解析で明らかとなった分子構造を表す際に、その異方性温度因子(熱振動)をラグビーボール型の楕円体で表した分子図がORTEP図です。美しいORTEP図を出力するためのいろいろなソフトウェアが知られていますが、ここでは容易に入手可能な PLATON を使ってMac上でORTEP図を作成する方法を紹介したいと思います。
要るもの
Olex2(一応なくても可), PLATON, Illustrator(なくても可) が必要です。Illustrator のみ有料ソフトです。Illustrator は使いこなせると強力なツールです。未検証ですが、無料の Inkspace でも同等のことができるかもしれません。
olex2, platon のインストールについては下記事を参照して下さい。
ORTEP図の作成
PLATON の起動
Olex2 で構造解析が終了したら、PTONボタンをクリックして、PLATONを起動します。
すると下のような画面が立ち上がります。
(補足)Olex2 からではなく、コマンドラインから直接 PLATON を起動することもできます。
$ cd ~/Documents/x-ray #X線のデータフォルダ (ここでは仮にx-rayとしています) の場所へ移動する
$ platon hogehoge.cif #cifファイル (ここでは仮に hogehoge.cif とします) をPLATONで開く
PLATONが起動したら、Ortep-Plotをクリックします。
Ortep-Plotの操作
Ortep-Plot が起動すると下のような画面になります。ここからの操作法が直感的に分かりにくいのですが、慣れれば簡単です。とくによく触る項目を説明します。
- Incl-HAtoms: クリックして白字にすると水素原子が消える(表示されなくなる)。水素を消したいときはクリック。
- Label -Hag+: クリックして白字にすると原子についたラベル (C1等) が消える。ラベルを消したいときはクリック。
- Decoration: クリックして白字とORTEP図の周りの文字が消える。これは消した方が見やすい図になるので、クリック。
- ViewOptions: 分子を見る角度を変える。見やすい角度を選択する。RotX, RotY, RotZ でマニュアルで角度変更も可能
- b&w-eps-col: b&w側をクリックすると白黒のORTEP図が、col側をクリックするとカラーのORTEP図がps形式で出力されます。出力時にメッセージがでないのでわかりにくいのですが、cifファイルと同じフォルダに同じ名前のpsファイルとして出力されます (cif名がhogehoge.cifなら hogehoge.ps が出力される)。
水素の表示・非表示、分子を見る角度などを調整したら、b&w-eps-col (カラー出力時はcol側)をクリックしてpsファイルを出力します。
IllustratorでのORTEP図の編集
作成したpsファイルはそのまま WORD に貼り付けることもできますが、より綺麗な図にしたい場合には、Illustrator でこれを整えます。まず、作成したpsファイルを Illustrator で開きます。
図が90°回転しているので、画像を全選択して [オブジェクト]-[変形]-[回転] で-90°回転させます。その後、色や文字を整えます。調整できたら、eps形式で保存します。下図は窒素の色を少し変えています。
eps形式はベクタ形式なので、図が軽量で高品質です。おすすめです。
参考:画像オブジェクトの「ラスタ形式」と「ベクタ形式」 違いと使い分けについて (株式会社アーティス)