研究

1. 遷移金属触媒を用いた新奇拡張π電子系分子の効率的合成法の開発

近年、有機機能性デバイスの活物質を指向した様々な新規機能性有機分子が報告されています。しかし、真に実用的な性能を示す有機機能デバイス作成のためには、より革新的な新規分子の合成が必要不可欠です。そのような背景の元、注目されているのが、チオフェン環を含むアセン系分子であるチエノアセンです。我々は、機能性有機分子の新たな候補として新奇骨格を有するチエノアセン、特にヘテロ原子を組み込んだ新規チエノアセン類に注目して研究を行っています。遷移金属触媒を駆使した新規反応を開発し、これを用いることで、これまでに下記に示す様に、多様なヘテロチエノアセンの合成に成功し、その基本的物性も明らかとしています (図1)。

図1. これまでに合成してきたチエノアセン系分子

2. 電気化学的に発生させた有機金属活性種を用いる分子変換反応の開発

近年、反応溶液に通電して反応を行なう電気化学的な分子変換反応が急速に注目を集めています。我々はそれ以前から、電気化学的に発生させたカチオン性パラジウム種を用いた様々な分子変換反応を報告しています。具体的には、Wacker型反応8)、アリールボロン酸のホモカップリング反応9)、アリールボロン酸とアルキンとの酸化的薗頭カップリング反応10) 等が効率よく進行することを見いだしています (図2)。これらの反応系は電気を用いない通常の化学的な変換反応よりも高い反応性を示し、基質適用範囲も広いです。

図2. 電気化学的に発生させた活性Pd触媒を用いた酸化的分子変換反応

3. 電気化学的な炭素ーヘテロ原子結合形成反応を鍵とするヘテロアセン合成

最近では、遷移金属をつかわない電気化学的な分子変換反応の開発にも取り組んでいます。例えば、電気化学的に発生させたブロモニウムイオン等価体 [Br+] 種を用いた S–H/C–H 結合切断反応による脱水素型カップリング反応を見いだしています (式1)11)。この反応は、電気化学的な炭素-ヘテロ原子結合形成によるチエノアセン類合成の最初の例となります。

式 1. 電気化学的に発生させた [Br+] による脱水素型縮環反応によるチエノアセン合成

参考文献

  1. Koichi Mitsudo,* Shuichi Shimohara, Jun Mizoguchi, Hiroki Mandai, Seiji Suga*
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  2. Koichi Mitsudo,* Hidehiko Sato, Arata Yamasaki, Natsuyo Kamimoto, Jun Goto, Hiroki Mandai, Seiji Suga*
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  6. Koichi Mitsudo,* Takuya Asada, Tomohiro Inada, Yuji Kurimoto, Hiroki Mandai, Seiji Suga*
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  8. Keisuke Shigemori, Momoka Watanabe, Julie Kong, Koichi Mitsudo,* Atsushi Wakamiya, Hiroki Mandai, Seiji Suga*
    Org. Lett. 2019, 21, 2171–2175.
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  9. Koichi Mitsudo,* Takuya Shiraga, Daisuke Kagen, Deqing Shi, James Y. Becker, Hideo Tanaka*
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    DOI: 10.1016/j.tet.2009.08.004
  10. Koichi Mitsudo,* Takuya Shiraga, Jun-ichi Mizukawa, Seiji Suga, Hideo Tanaka*
    Chem. Commun. 2010, 46, 9256–9258.
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  11. Koichi Mitsudo,* Ren Matsuo, Toki Yonezawa, Haruka Inoue, Hiroki Mandai, Seiji Suga*
    Angew. Chem., Int. Ed. 2020, 59, 7803–7807.
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